街を歩いていると・・
今までディナー営業だけしていた飲食店が、急にランチ営業を始めているのに驚きます。
なぜディナー営業だけではダメなのか、を探るとある事実が分かりました。
環境の変化です。
お店は売上見込みや目標に向かって作ります。
しかし、当初はかなり人通りもあり、これなら「この位の売上は見込める」と踏んでお店を出店したに‥
何らかの要因で環境が変化したために。
目標の売上まで到達しなくなったのです。
これは全国にある飲食店に言えることですが、環境の変化により閉店を余儀なくされた事例はかなり沢山あります。
その事実をすでに知っているオーナーや、店主は“別の売上が立つ”ことを始めようとするのです。
それがランチ営業を始めることに繋がっています。
これまで見込んでいた売上が立たない分を、ランチ営業を通して補填して、経営を持続させたいのは飲食店のオーナーならば誰でも考えます。
しかし、実際に数ヶ月間、営業してみて数字を見ると分かりますが、ディナーの売上からするとランチで得た売上の少なさに愕然とします。
なかなか脱却できない負の連鎖。
ここを脱するために悩み続けているオーナーは多いです。
この記事では飲食店オーナーが考える「ディナータイムの赤字をランチで補うことはできるのか」を考察するとともに、その考えが本当に正しい選択なのかについて説明します。
原因の究明が必須
そもそもなぜ。
今まで順調に売上を伸ばしていた、ディナータイムの売上が減ることになったのでしょうか?
このように質問をしても、明確に答えられる方は非常に少ないです。
一つ考えられることは、業績が芳しくないお店がある場所の「周りの環境が変化」したことが考えられます。
昨年までは、人通りもあり、そこまでお店の宣伝をしなくてもお客さんが来店していました。
今年になり。
今まで工事していたビルが完成して、人の流れが急に変わってしまい集客が一気に苦しくなった。
これは例にすぎませんが、実際に私が見てきたことです。
それともう一つあります。
飲食店を経営していると、独特なことに遭遇しますがブームの終焉です。
ブームがある内は、マスコミなどにも積極的に取り上げられるので、売上が上がります。
しかし、一度でもそのブームが過ぎ去ってしまうと・・
見事なまでにガラガラになります。
これは他の業界でもありますが、飲食業ほど極端ではないです。
このように何らかの原因があって売上が下がっています。
できればその原因を早期に究明して、お店の努力で改善できるならしたほうがいいでしょう。
何の原因で売上が下がったのか、を探すにも時間と労力がかかります。
そん時間を使わずに。
今の売上がヤバイ!
すぐに売上を上げなければ!
このように短絡的に考えてしまい。
ディナーの売上が落ちているから、ランチ営業を開始してまずは売上を確保しようと考えます。
この考え方は分からないでもないですが、よく調査もしないで、ランチ営業に踏み入れるのはかなりのリスクが付きまといます。
結論を先に言うと、ランチではどうやってもディナー分の足らない売上の補填はできません。
客数と客単価の関係
なぜランチを営業して、ディナーの不足分を補えないのかですが、単純に客単価がランチは低すぎます。
ディナータイムの平均客単価5000円だとしても、ランチの平均客単価はせいぜい1000円くらいです。
ディナー1人分の5000円の売上を上げるのに、ランチは5倍の人数を入れなくてはなりません。
この例を計算していくと。
ディナータイム10名分の赤字をランチで補うには、50人をランチで集客しなくてはならない計算になります。
これではランチでいくら人件費や光熱費、材料費などの経費をかけないようにしても、ディナーの赤字を補えるどころか、逆にランチ営業をすればするほど赤字になります。
赤字を補うために始めたことが、赤字をさらに増やす続けることになろうとは、予めその予想ができないくらい、緊迫した経営状況まで陥っていると考えられます。
一方では。
ランチの営業をサッサとやめて。
ディナーだけに絞ろうとするお店があるのに不思議なものです。
ランチはランチ戦争があるので、例では「50名」と書きましたが、実際に毎日50名を集客するのは大変です。
価格が安い方が集客はしやすいのは確かですが、安い分。
競争店の数も多いので、どちら言っても状況はさほど変わらないのです。
どのみち変わらないのであれば、単価が高めになりやすいディナーの営業を、頑張った方が利益に繋がります。
ランチのお客さんをディナーへ呼び込むため、と考えているオーナーがいますが、ランチとディナーは分けて考えるべきです。
そして、そのようなお金の計算をするよりも。
お客さんが何を求めて、どのような事を望んでいるのか?を真剣に考えた方がいいでしょう。
最大のポイントは損益分岐点
損益分岐点とは、この売上まで上がると利益もないけど赤字でもないラインの事を言います。
ディナーの損益分岐点が高すぎるために、ランチ営業をする羽目になるようなら、一度、損益分岐点を考え直すべきです。
この話は私が以前、勤めていたお店のことです。
そのお店は客席が110席、1階が通常の客席、2階は個室風の客席、テラス席と分かれたお店でした。
それだけ広いので当然経費が大きく掛かります。
それも尋常じゃない経費です。
私はそのお店の数字を見る立場にいました。
ディナーのクオリティーや使える経費を維持したいならば、ランチ営業をして少しでも売上を上げるしか方法がありませんでした。
当時働いていたスタッフの反対を押し切る形で、ランチ営業をすることになりました。
その結果は完全に惨敗でした。
それもそのはずです。
そのお店は開業から7年あまり経っています。
それまで一度もランチ営業をしたことがないお店です。
そんなお店が自分の都合でランチ営業をしても、そんな簡単には受け入れてもらえる筈はありません。
ランチ営業をする目的はディナーの売上の補填です。
なので、ランチ営業をして、すぐに売上を上げていかなくては売上の補填はできません。
しかし、現実は全く集客できない日々が続いて毎日惨敗続きです。
結局、当時の会社の判断で3ヶ月だけ営業をしましたが、赤字が増えただけでした。
この失敗の経験からも分かるように、ランチはランチの戦い方があるというわけです。
そして、ランチ営業を始めても、すぐに集客ができるか分からないので、しばらくは様子を見ることになります。
様子を見るのに。
リスクは抱えられないので、少ない人数のスタッフや、ディナーで使い切れずに残った材料、それらを使ってなんとかランチ営業をしようとします。
ここまでお読みになれば分かるように、そんな簡単には売上を上げることはできませんし、売上も望むような金額になることはないです。
なので、もしディナーの赤字の補填をしたいならば、売上をランチに求めるのではなく、損益分岐点を下げるにはどうすればいいのか、を考えるようにしてください。
その方が現実的であり結果的にはリスクが少ないで済みます。